物語はいつも不安定

SF小説が好きすぎて

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

くじらみたいに

「ねえ、今年もね、流行語大賞の時期になったよ」 「そっか。もうそんな時期なんだ。どんなのがあるの?」 「今年はねえ、私これ好きだな。くじらみたいに、だって」 「何それ。どんなとき使うの?」 「わからないよ。今私が適当に考えたから。流行語なんだ…

紅葉を眺むれば

なにもかもがどうでもよくなって夜の新宿をひた歩いてたら怖そうなお兄さんとか酔っ払ったおじさんが話しかけてきたからちょっとずつ明かりの少ない方へずんずん歩いてわんわん泣いた。 でももう泣きすぎて歩き疲れて深夜を回って家に帰れなくなって自分がど…

中華鍋奇譚

私の一番古い記憶は、まだ小学校に上がる前の運動会。私はお母さんの作った豪勢なお弁当がおいしすぎて踊り狂っていた。おかずはひとつひとつ丁寧に作りこまれた宝石みたいで、幼児の舌にとってもそれは感動だった。 私はそのときしげしげと、かきたまあんに…