物語はいつも不安定

SF小説が好きすぎて

2016-01-01から1年間の記事一覧

讀書倶楽部

というWebサービスがある。 そのころ本を読むか、大学の過去問を解くか、過去問を解いているふりをして本を読むかのダメダメでしょっぱい浪人生だった僕は、インターネットの端っこでアカウントを作った。 アカウントを作らないと中身が見れなかったから、世…

書いているというわけでもなくて

新聞社に送る原稿が仕上がって、さて煎茶でも飲んで一服しようと女中を呼びつけた。今晩はどうして過ごそうか。すると、奴はお茶ではなく何か紙のようなものを持ってやってくる。 「旦那様、あの、お手紙みたいです…」 見ると封筒には差出人の名前がなく、し…

われわれがいなくても、世界はけっこうやっていきますよ

『渚にて』 本の内容に青春は無くても、僕の青春とこの本は、間違いなくしっかりと結びついていた。 当時僕は恥ずかしいほどロマンチストであった。 大学一年生になって初めての夏休み、遠距離恋愛になった彼女に会いに、東京から福岡まで新幹線に飛び乗って…

オーロラが美しい理由と2月14日の関係

「いや、そもそも。 本来地球にはものすごい量の宇宙線が降り注いでいて、それはきっと地球上の生物の持つ遺伝子を片っ端から壊していたはずなんだよ。 想像してみて。太陽から降り注ぐ放射線の量なんて、原子力発電所の比じゃないし、知ってる?宇宙飛行士…

ベテルギウスの爆発と私の妄想の爆発

11月が終わって街にクリスマスムードが広がっていく頃、それは観測された。 「ねえ、ニュース見た?」 「なんの?」 「なんかね、星が爆発するんだって」 「なにそれヤバい!ヤバいの?笑」 「え、あんたホントにわかってる?ニュース見てないの?」 「見て…

とっておきのオーダーメイド・スーツ

スーツを仕立てたのは初めてで。 僕は今22歳で、お店は姉が紹介してくれた。社会人になるならオーダーするっしょ!なんつってノセられたのだ。 4つ上の姉が言うには、僕の入る会社は「お硬い風土」だからスーツは素材で勝負なのよ!なんていって。紹介してく…

宛てのない、いつかだれかの20歳へ

文字を持たないムガベナ族。 「文盲」は私たち文明人からするとどうも原始人という感覚だがそんなことはない。 私たち文明人、という呼び方は間違っていた。 ムガベナ族から僕はそれを学んだ。 ・・・ 「ねえ教授、結局彼らはどうやって昔のことを覚えている…

僕がこの世に生を受けた時、母はぐっすりと眠っていた。 すやすやと幸せそうに眠った母が目を覚ますことは無く、僕の泣き声と一定のリズムを刻む電子音が手術室を満たしていた。 母は幸せそうに何年も何年も眠った。 これは、僕の21年間に渡る愛のストーリー…

僕たちはかっこよくなりたい

カズヤの脚は思ったよりも悪かった。 "ごめん、どうしてこんなになるまでほっといたんだ、って怒られた笑" 笑、じゃねーよ。 深夜に受け取ったこのメッセージに、アキラもタケルも、もちろん僕も笑えなかった。 カズヤは僕らのチームにおける攻撃の要だけじ…