物語はいつも不安定

SF小説が好きすぎて

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

書かれた世界

もしあの本に出会っていなかったら、と思うと今でもそわそわする。 こんな文章を書くこともなかったし、自分に疑問を抱くこともなかったに違いない。 本から受ける影響がいいものばかりなんて嘘っぱちだ。いずれにせよ僕は見つけてしまったのだし遅かれ早か…

渡したものと受けとったもの

先生はいつもあたしにだけ厳しかった。 他のみんなが外で遊び始めてもあたしだけはいっつも居残り。 あたしだけ何か怒られるようなことをしたっけ?あたしはそんなに落ちこぼれだったかな? そんなことないと思う。あたしは誰よりも早く字をかけたし、みんな…

写真名人伝

群馬の山の端に住む木庄という学生が、天下第一の写真の名人になろうと志を立てた。天下で何事か成し遂げるため重要な才覚はひとえに情熱と時間である。雨垂れでも同じ場所に着地し続ければ岩をも穿つ。 その点木庄はまだ15にならない若輩者で時間については…

長くて古くて大きな約束

あいつの手には水かきがあった。 俺らはいつも木の実だとか虫だとかを捕まえて食べる。だからどうしたって手の違いには敏感だ。あいつの手がヒダヒダのせいで大きく開かねえのを、仲間の連中はことあるごとにバカにしたもんだ。 「おい、指をもうちっと広げ…