物語はいつも不安定

SF小説が好きすぎて

世界を変えるブログ記事

"はじめまして。突然こんな手紙を渡してしまってごめんなさい。私は都内の高校に通う二年生で、---と言います。チアリーディング部で部長をしています。

 

いつもあなたと同じ東成線に乗っていたんですが、あのときのこと、覚えていますか?朝からすごく暑い日差しの6月のこと。私はその日とても具合が悪くなってしまってその場にうずくまってしまいました。そのときに声をかけてくれて、ベンチまで連れて行ってくれて、冷たい水を買って飲ませてくれました。

 

そのとき私はぼーっとしてしまってお礼も言えずに本当にごめんなさい。駅の医務室に連れて行ってもらったまま、きちんとお話しもできませんでした。きっと遅刻してしまったんじゃないかと思うととても申し訳ない気持ちになります。。

 

それからというもの声をかけるチャンスを探していたのですが、毎日すごい満員電車のせいでこんなに時間が経ってしまいました(スミマセン。。。)そこでこんな風に手紙を書いて渡すことにしました。

 

本当のことを言うとあんな風に私を助けてくれる前からあなたのことは知っていました。いっつも新聞かオシャレな外国の雑誌を読んでいたのが気になってよく見ていました。こんなことを書いて変な人だと思われなければいいのですけれど…実は前からとてもステキな人だなあって思ってました。

 

こんなことを言っても子供の言うことだからってバカにされるかもしれないけれど、あのとき私のことを助けてくれたのがあなただったのを見て、ホントは神様にすごくお礼をしていました。こんな風にあなたと会わせてくれるのも神様だとしたら、なんというかとても、気の利いたことをしてくれるなあってぼんやり思っていました。

 

長々とすみません(読んでくれてアリガトウゴザイマス。。)なので一度、改めてお礼をさせてください。お礼の品をお渡ししたいので、できればここにメールか電話をしてもらえたらホントにホントに嬉しいです。ご迷惑じゃなければ…

 

最後にひとつだけ、どうしても言っておかなくてはならないことがあります。実は、最初に高校二年生のチアリーディング部と書きましたが、それは嘘で本当の私の姿は頭の上面が薄くなりかけた50絡みのおっさんだということです。

 

どうかここで手紙を捨てるのはやめてください。どうしてこんな手の込んだことをしてわざわざあなたに手紙を渡しているか考えてください。あなたにこの手紙を渡したのはまごうことなき女子高生だったはずだ。それもかなり美人の。しかしあの女子高生は本当に今この手紙を書いているおっさんになるといったら驚くだろうか。

 

何を馬鹿なと思うかもしれないがこれは確定した事実だ。いや、確定する予定の事実だ。君はきちんと常識と科学的素養を身につけたジャーナリスト兼サイエンス系雑誌の翻訳家でもあるからきっと大丈夫だと思うが、今この地球が直面している最大の環境問題は地球温暖化問題であり、その主因は温暖化ガス、すなわち二酸化炭素であることを深く理解していることを期待している。

 

しかし、問題はそんなことではないのだ。

 

二酸化炭素による地球温暖化問題は早晩解決される。なぜそんなことをと君は思うかもしれないがこれも確定されようとしている事実だ。この問題に君の存在は鍵ではない。しかし地球温暖化より、もっと深刻な事実が立ち現れる。

 

それは「ある現象」を引き起こすガスが地球上に蔓延することで引き起こされる。そしてこの手紙を君に渡した女の子もその犠牲者となる。

 

そのガスは「COSsan」正式名称でオッ酸化炭素と呼ばれている。語頭にアクセントだ。笑っている場合ではない。君が今温暖化ガスのことを笑い飛ばせないのと同じ理屈で我々はこのガスを極めてシリアスに扱っている。

 

オッ酸化炭素の引き起こす地球オッ酸化現象は現在のホモ・サピエンスの様相を根本から変えてしまった。オッ酸化されたデオキシリボ核酸がメッセンジャーRNAに渡す情報が全てオッ酸化しているといえば君にはわかるだろう。

 

その現象が引き出す帰結は見渡す限りのオッ酸だ。いや何もオッ酸が悪いといっているわけではない。良くも悪くも人類の歴史を牽引してきたのはオッ酸だからね。君もその一人となるのだが。話を戻そう。

 

見渡す限りオッ酸という状況は一億歩譲って文化的には許容できても人類の存続という観点から見ると余裕でアウトだ。オッ酸同士で次の世代を生み出すことは不可能であるという声明が出て久しい。生命だけに。(これもオッ酸化現象の副産物だ。わかってくれるね?)そして人類がオッ酸化してきた原因をDNAの痕跡から探しに探して一番最初に遺伝子の突然変異を引き起こした人間を突き止めることに成功した。君の時代の日本だ。君ではない。君は既にオッ酸だ。

 

詳しい仕組みを書けるほどこの手紙は長く持たないのだが、どうやら君の住む国で君の周りに住む誰かが起こす後天性遺伝子異常が原因でオッ酸化ガスが体内からにじみ出る。それは加齢臭を母体とする。そしてそれを吸った人間もオッ酸化ガスを生産し始めるのだ。

 

これは唯一考えられる希望の一つに過ぎないのだが、君の周りに住む誰かが毎日をもう少しハッピーに過ごし、笑顔を絶やさなければ、遺伝子異常は起こらない。環境が遺伝子を変えることは君の時代に既に発見されているね?オッ酸化を止める鍵は毎日の「あたしハッピー!」だということだ。そうすれば加齢臭は加齢臭のまま香ばしく、あの恐るべきオッ酸化炭素に変化する時代はやってこないと推測されている。

 

だから君は、賢明なる君はこの手紙を読んでここに書かれていることを世間に広く発表しなければならない。そして最初の遺伝子異常を引き起こす人間、ファーストオッ酸がそれを読んで少しだけ楽しく、少しだけ笑顔になれば、この見渡す限りオッ酸(地獄絵図だ)という事態、いや、きっと私の存在すらも起こらないことになっているだろう。もう一度書いておこう。地獄絵図だ。

 

もしかして君はこの文字が少し薄くなってきたことに気づいただろうか?私の髪の毛くらい薄くなればいいのだが。はっは。いやそれはオッ酸化された冗談だ。文字が薄くなることはいい兆候だ。君がこのことを信じ、ブログに書いて広めようと強く思うことそのものが、このオッ酸化した未来の消滅につながるから、この手紙も消失する運命にあるのだ。

 

ああ、私も髪の毛だけでなく薄くなってきたように思う。ありがとう。本当にありがとう。きっともうこの文字はかすれて見えなくなってきているに違いない。私も元のオッ酸ではなかったはずの自分に戻れそうだ。

 

そうだ。まだ時間があるならばきちんと伝えたいのだが、この手紙を渡せたはずの女の子は実在する。いや、実在しようとしている。だってやっぱりそれは私だから。ねえ、本当は見覚えあったんじゃない?似てなかった?またいつかさ、けっこうすぐに会えると思う。駅のホームで助けるんじゃなくて、もっとしっかりと抱きとめてくれる形で。すぐに会おうね。おと”

 

私が読めたのはここまでだった。そしてそれが私がブログを始めた理由である。つい先日妻の妊娠がわかった。きっと女の子だろう。そんな確信が僕にはある。

 

 

今週のお題「私がブログを始めたきっかけ」

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