物語はいつも不安定

SF小説が好きすぎて

シモニデスの宮殿

真夏の一夜に華を添える、強烈な思い出になればいいと思っていた。いつまでも僕ら三人が覚えていられるような、そんな思い出にするはずだった。 それで僕はあの廃墟の話をした。 「ねえ、ここ見つけたのだいぶ前なんでしょ?よく道覚えてるよね」 「俺の記憶…

いつまでも南の島で

きれいなペンションだった。 「うおー!何これ!すごいリアルだねー!」 隣で真理が歓声をあげた。本当だ。すごいリアルだ。しゃがんで砂を握ると一粒一粒がさらさらと崩れた。本物みたいだ。湿った塩の香りと波の音で海までの距離がわかる。 「早く入ろうよ…

裸に見える王様

「王様は裸だ!」 と叫ぶ声が聞こえました。 でも、王様はきちんと服を着ていたのです。ただ、見えなかったのです。 むかしむかし、あるところに、服を着るのが大好きな王様が住んでいました。 王様は贅沢なご飯や勇ましい戦争には興味がありませんでした。…

夏が来るからあいつも来るから

えー、最近ではやれ扇風機だァ、クーラーだァ、おてんと様の下は暑くってかなわねェのに、ひとたびおうちんなか入りましたらばァ秋をすッとばして冬が来たかッてェくらい冷えております。 しかしまァ昔の家には電気なんて上等なものはありゃしませんな。そん…

今日も研究所の外は虹

できた。 シミュレーションの再開を操作すると上空から小さい水の粒がたくさん、数え切れ無いほどたくさんの水の粒が大地に降り注いだ。ちょっとやり過ぎたかもしれない。 細かい水の粒は大地に落ちて合流し、次第に大きさを増した。もう水の粒ではない。一…

グアテマラ・ラプソディー

「次はー…ラー、…テマラでー、ございます。」 足音で目が覚めた。 見ると車両から降りる人々で出口に列ができ、僕と皆川さんはそれをおだやかに見つめていた。降りなければいけないのだろうか?しかしこの電車は山手線だし、池袋に着くにはまだ早い。睡眠不…

世界を変えるブログ記事

"はじめまして。突然こんな手紙を渡してしまってごめんなさい。私は都内の高校に通う二年生で、---と言います。チアリーディング部で部長をしています。 いつもあなたと同じ東成線に乗っていたんですが、あのときのこと、覚えていますか?朝からすごく暑い日…

雨の日には図書館へ

雨の日に図書館なんていくもんじゃない。と35度目の後悔をしながら階段を上った。 休日に何の予定もない日は、といってもたいてい無いのだけれど、図書館へ行く。家の近くにある図書館は2フロアしかなくて、子供の読み聞かせに一番大きな部屋が使われている…

ごんぞうだってアツくなるんだから

私の名前はアンジェリカ・ごんぞう。 こう見えてもびっしゃびしゃの47歳!実はフランス人と日本人のハーフなんだ!梨花は!でも私は特に梨花じゃないし特に周りから見ても女子高生には見えないもっさいおっさんなんだよ! おっさんだって!生きているんだよ…